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「今日は普通なんだな」
缶ビールの泡を口元につけながら、レプトスが窺うようにこっちを見た。
「普通って?」
「だって今日は水曜日だろ。お前、いつも水曜日は怒ってるだろ。あの忌々しいガリガリ差別主義者のせいで」
デルトラのことだ。
デルトラの「指導」についてアスターが愚痴るのはレプトス相手だけだった。
「気にしないことにしたから。今は、もっと考えたいことがある」
「5番シアターのことだろ?」
レプトスの言葉に、アスターは頷いた。
「この前は行けなくって悪かった。たまたま寮で仕事を押し付けられて」
「気にするな。それより報告なんだが、実はあの日より五十メートル先まで進んでみたんだ。そしたらなんと、前よりももっとはっきりと電波が入った」
「それ本当か!?」
興奮して身を乗り出したレプトスを手で制し、アスターはつとめて冷静に言った。
「ああ。だけど安全かどうかはわからないからな、そこまでしか行けなかった。もっと情報を集めないと」
「今度はいつ行くんだ? 次は俺も一緒に行くよ」
「そうだな……次の金曜の夜は?」
「オッケー。空けとく!」
レプトスは嬉しそうにうなずくと、スナック菓子の袋を持ち上げ、最後に残った細かなかすを口の中に流し入れた。アスターがぼんやり星を眺めていると、レプトスは急にちらちらとアスターを見て、なあ、と上目づかいにこっちを見た。
「なんだよ、気持ち悪い」
「いや、彼女とは……何かあったのかなって」
「彼女?」
アスターがしらばっくれてると思ったのか、「そう、彼女だ」とレプトスは名前を言わず、もう一度繰り返した。
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