door in the 5th theater

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「今日は普通なんだな」  缶ビールの泡を口元につけながら、レプトスが窺うようにこっちを見た。 「普通って?」 「だって今日は水曜日だろ。お前、いつも水曜日は怒ってるだろ。あの忌々しいガリガリ差別主義者のせいで」 デルトラのことだ。  デルトラの「指導」についてアスターが愚痴るのはレプトス相手だけだった。 「気にしないことにしたから。今は、もっと考えたいことがある」 「5番シアターのことだろ?」  レプトスの言葉に、アスターは頷いた。 「この前は行けなくって悪かった。たまたま寮で仕事を押し付けられて」 「気にするな。それより報告なんだが、実はあの日より五十メートル先まで進んでみたんだ。そしたらなんと、前よりももっとはっきりと電波が入った」 「それ本当か!?」  興奮して身を乗り出したレプトスを手で制し、アスターはつとめて冷静に言った。 「ああ。だけど安全かどうかはわからないからな、そこまでしか行けなかった。もっと情報を集めないと」 「今度はいつ行くんだ? 次は俺も一緒に行くよ」 「そうだな……次の金曜の夜は?」 「オッケー。空けとく!」  レプトスは嬉しそうにうなずくと、スナック菓子の袋を持ち上げ、最後に残った細かなかすを口の中に流し入れた。アスターがぼんやり星を眺めていると、レプトスは急にちらちらとアスターを見て、なあ、と上目づかいにこっちを見た。 「なんだよ、気持ち悪い」 「いや、彼女とは……何かあったのかなって」 「彼女?」  アスターがしらばっくれてると思ったのか、「そう、彼女だ」とレプトスは名前を言わず、もう一度繰り返した。
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