プロローグ

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 この世界の奴らは、この世界のことを何も知らない。  自分たちが何を知らされず、何を隠されているのかを。  穏やかな自分たちの暮らしの同じ大地の先に、どんな地獄の炎が燃えたぎっているのかを。  情報は遮断され、制限されている。ある一線から先は何も知ることができない。  その線を越えた先は全くの無、広がるのは銀世界のように真っ白な空間。存在しない雪が降り積もる街。  じゃあここは?  質量をもった本物の雪が降るここは何色の世界だろう?   ――正解は黒だ。  何も見えない、漆黒の闇の世界。黒く塗りつぶされた変化のない完璧な世界。  俺はそんな黒と白の世界の狭間の、灰色の世界で生まれた。雨雲が集まり、強い風が吹く。まるでいつだって嵐の前のような、限りなく黒に近いグレーの世界が俺の生きる世界だった。
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