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「悪い、本当にわからないんだ。彼女って誰だよ」
「誰ってレディ・トゥエルブ、デンドロビウムのことに決まってるだろう?」
「……ええ?」
なぜだか名前を聞いただけで頭に細かな痛みが走った。あのお気楽で能天気な笑い声が脳内でわんわんと響く。
「今日、お前がいないからかデンがすごく不機嫌でさ。だからみんなにしつこく聞かれたよ。お前とデン、どうなってるんだって」
「なんで俺とあいつがどうにかなってることになってるんだ? みんなが思ってるようなことはなにもないよ。むしろ向こうがしつこく付きまとってきて迷惑してるくらいで」
「そうなのか?」
「そうだ」
強い口調で言い放つと、レプトスは「ふーん」と言ってアスターの顔を見つめた。まったく信じていない顔だ。
「聞いた話だと、タキユリもデンのことが好きらしいぞ」
「チウラ・タキユリが?」
「ああ、そうさ。ローズマリーとかパフとか、会の女子たちはみんな言ってた。ストックはそんなの絶対に認めない、別れさせてやると息巻いてたけどな。あいつはマジでタキユリの母親か何かだと勘違いしてるんじゃないか」
そのうちダサいセーターでも買ってくるぞ、とレプトスは笑った。
「相手がタキユリとなると、強大なライバルだ」
「だから俺とあいつはそんなんじゃないって」
何度否定しようと、レプトスはまるで信じる気がないようだった。一体どうしてそんな噂が立ったのか。はた迷惑な勘違い過ぎる。アスターは反論するのを諦めてごろりと後ろに寝転がった。視界いっぱいに、小さな星々が光る黒い空が広がる。
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