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5番シアターの中の扉の向こうに魔物が棲んでいるという話を聞いたのは、およそ半月前のことだった。
2番シアターに住む不法入国のコロボックルが話してくれたそれは、町でまことしやかに話されている、だいたいが大嘘の都市伝説の一つで、初めはアスターもレプトスもセンスのない噂話だとまともに取り合ったりはしなかった。
「オイラだって初めは信じちゃいなかった」
顔に大きな痣のあるその年老いた小人は、しゃがれた声で言った。
「だがな、実際にその扉の向こうへ行ったきり、帰ってこなかった奴らが山ほどいるんだ」
「その帰ってこなかった人たちは、魔物に食われたってこと?」
「そうさ。あの扉の中には、このキャマレイトの町がまだ小さな共和国だった頃に、町の入口で門番をしていた魔物があそこに封印されてるんだ。魔物の出す論題に答えられなければ、次の瞬間には」
コロボックルはその猛禽類のような鋭い瞳をギラリと光らせた。
「魔物の腹の中ってわけさ」
ここまで好奇心を煽られ、無視することはできない。気づけば、どちらともなく5番シアターの入口に立っていた。
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