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ぞわり、全身の毛穴がすべて開くような気味の悪い感覚だった。
いつのまにか心臓の鼓動が速まり、呼吸をすることも忘れていた。
ザーザー、ジジ、ザーザー……
耳障りな雑音、電気的雑音、ノイズだ。
「なんだ?」
暗闇の中でレプトスと顔を見合わせ、咄嗟にジーパンのポケットに手を突っ込む。
「これだよ!」
出したのはラジオだ。いつのまにかスイッチが入ってしまっていたらしく、電源ボタンが赤く点滅していた。
「どうして! ラジオが!」
そのノイズははっきりと、手の中にあるラジオのスピーカーから発せられていた。
混乱とかすかな期待のようなものがない交ぜとなり、濁流のように一気に押し寄せてくるようだった。
「一旦戻ろう」
レプトスの言葉に、アスターも即座に頷いた。立ち去る前に一度だけ、後ろをふり返り、何も見えない暗闇をじっと見つめる。
「だっておかしいじゃないか!」
闇の中を無我夢中で走り、明るい劇場までたどり着いた。扉を閉めるや否や、アスターは叫んだ。
「このラジオは、ゲッツァバーグから持ってきたものなのに! つまり、魔法世界であるここキャマレイトでは電波が入らない、なのにどうして、その入らないはずの電波が入ったんだ!?」
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