sixth sense

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「ねえ、ペックバッカー、私たちのこと勘付いているのかしら」  ――それか、と内心手を打つ。 「そんな感じだった?」 「そんな感じだった」  ペックバッカーとは十二寮の指導教授である。まだ三十にも届かないニコラほどでもないが、教授陣の中では比較的若い四十代だ。趣味は生徒を爆裂ファンキーという魔法の大砲のようなもので飛ばす(カボチャではなく生徒だ)ことであるため、横暴で意地の悪い教師として通っているが、アスターは講義中、なんとなく何かを見透かされているような居心地の悪さを感じることがあり、印象に残っている。 「学生と内緒で付き合うっていうのはスリリング?」  人がいないことを確認してニコラの頬にキスをすると、「やめてよ」と大袈裟な笑いが返ってきた。 「そろそろ行くわ。勉強の邪魔しちゃ悪いし」 「今夜会う? 食事でも」 「今夜はだめ」  大きな瞳に意味深に見つめられ、一秒にも満たない時間思案したが、「そっか」とアスターは引き下がった。しつこい男はスマートではないし、恋愛は押してばかりでも駄目だ。  ニコラ・アームスヘッドがフロアから出ていくのを見送り、アスターは深いため息をついた。
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