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ここキャマレイトは、共和国時代に築かれたという「シールド」という強大な魔法によって守られている。シールドは町全体をドーム状に包む見えない壁のようなものだ。そのため森の中をどれだけ進もうと、空に向かってどれだけ飛び上がろうと、どこかほかの場所に行きつくことは決してなく、逆に何者かが町に侵入することも防いでいる。それがシールドの「防護」の役割。そして「転送」とはキャマレイトからミンターへ、ミンターからキャマレイトへと移動させる役割である。
本によれば、シールドは「防護」と「転送」という二つの膜を持っているという。その二層のうち、ミヌー橋の一か所において、「防護」の層を意図的に解除しているため、橋が唯一の出入り口の役割を果たしているというのだ。
(そう思ってた、でもちがったんだ)
前々からミンターへと通じる秘密の道は、生徒の間でまことしやかに噂されていた。だが、たいていの抜け道は教授たちにも把握されているのだろう、冒険に出かける途中で御用、というのがありがちなパターンらしい。
(でも道じゃなくて、穴だったんだ!)
秘密の抜け道、という話ばかり聞いていたため、てっきり長い通路でもあるものだと思っていた。
だがこの前、デンはシールドに「穴が」開いている、と言っていた。仮にその抜け道の正体が「穴」であるならば、そして「穴」の先がミンターへ繋がっているというのであれば、つまりそれは「防護魔法」のみに穴が開き、「転送魔法」は破られていないことを指す。では、もし仮に、シールドの「防護魔法」だけでなく、「転送魔法」にまで貫通する穴が開いていたとしたら、通じる先はどこだ?
――それは、キャマレイトが本来存在している場所にちがいない。そこが、実は魔法の世界の外だったとしたら?
正確には、ゲッツァバーグのある世界、無魂の世界だ。もしこの仮説が正しければ、そして5番シアターの通路が穴に繋がっているとしたら、ラジオが電波を受信したことも説明がつく。
でも、そんなことがあり得るのだろうか?
「ところでなんでシールドについて調べてるんですか?」
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