sixth sense

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 デンの言葉にハッと現実に戻された。考えることに夢中になり、しばらく相手をしていなかったら、本を読むのに飽きてしまったのか、デンは机に突っ伏して退屈そうにパラパラとページをめくっていた。 「何かの課題ですか?」 「ああ。魔法史学の授業でキャマレイトの歴史についてレポートを書こうと思って、いろいろ調べてるだけだ」  もちろん嘘だ。そんな課題は出ていないし、仮に出ていたとしてもこんな縁もゆかりもない町の歴史について調べようとはしないだろう。だがいつからかこんな風に、呼吸するように嘘がつけるようになってしまった。 「そうなんですかー……それにしては、シールド関連の本が多い気もするけど」  一瞬、散乱した本を片づけようとした手が止まった。だが、 「頑張ってくださいね、レポート」  というデンの声で我に返る。  よかった、別に不信がられているわけではないのだ。 「でもキャマレイトって本当はどこにあるのかちょっときになりますよねえ」  なりません? と言ってきたデンの顔は無邪気そのもので、何かを感づいているようには見えなかった。だが、あまりに見透かされたような質問に戸惑う。 「だって小さな町とはいえ、町は町ですよ。気候は温暖だし、季節からして北半球のどこかにあるっていうのは確定じゃないですか。この現代世界に、町一つ隠すことができて、いまだに誰にも特定されてないってすごくないですか? そんな場所、この世界に本当に存在するのかなー」 「……さあ、な。でも、キャマレイトの場所を特定なんかしたら、捕まるんじゃないか?」 「たしかに伝説は伝説の間までいるほうが、ロマンがあっていいですよね」  こいつは人の心が読めるのか?  アスターが掴みかけた仮説のすぐそばまで、デンはまるでスキップをするようにやってきた。だが、何も気づいてなどいない。すべては偶然のはずだ。 「なんですか?」  見られていることに気づいたのか、きょとんとしてデンは首をかしげた。 「別に」  勘のいい奴、とつぶやいたアスターの声は聞こえなかったのか、デンは眠そうに大きなあくびをした。
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