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レディ・トゥエルブことデンドロビウム・マクレインベリーは、学園では知らぬ者がほとんどいない、有名人だ。キャマレイトの人気スポーツ、ダッシュの名プレーヤーで、学園一の問題児、秘密結社ペンドラゴンクラブで起こした数々の珍騒動のせいで教授たちからは目をつけられているが、それらはすべて伝説と化している。アスターと出会うこととなったノルニル会でも、彼女は常に輪の真ん中にいる。
そんな彼女が、いつ自分を気に入り、付きまとうほどになったのか、その心当たりは、残念ながらアスターには全くなかった。なぜ自分のように目立つ訳でもない、平凡な学生に興味を持つのか不思議でしかたない。だが、どんなにそっけなくしてもつれない態度をとっても、デンは諦めずに何度もアスターの前に現れる。デンが厄介なのは、しつこくてしぶといことに加えて、遠慮を知らないということだ。
「どんな番組が好きなんですか? トークラジオとか聴きます? あ、もしかしてピース・マクレガーのハイスクールラジオのリスナー?」
「聴かない」
アスターはぽんぽんとくり出されるデンの質問に、すべてそっけなく答えたが、デンはそんなことは一向に気にせず、まるでそう、ラジオのパーソナリティのようによくしゃべった。
「私にも聴かせてくださいっ」
「やめろっ」
止めようとしたが遅かった。無理やりアスターのヘッドフォンを奪い取ると、デンは自分の耳にそれをつけ、そしてすぐに奇妙な顔をして首をかしげた。
「あれ、スイッチ入ってない?」
首を傾げてアスターのポケットからラジオを奪い取るも、いくらガチャガチャとチャンネルを回したところで、ラジオはただディスプレイ画面に「エラー」の文字が光るだけだった。
「……もしかしてこのラジオ、壊れてます?」
「壊れてない。電波が入らないだけだ」
「うそ! だって世界共通電波で、グウェンドリン以外の国の電波すら入るんだから、そんなことあるはずないです」
「もういいだろ」
アスターは納得がいかないデンからラジオとヘッドホンを奪い返すと、そのままそれを無造作にポケットに押し込んで歩き出した。
「どこ行くんですか」
「お前には関係ない」
うしろでデンはまだ何か叫んでいたが、アスターはその声を遮断するようにヘッドフォンを耳につけ、そのままエンターテイメント街の方角へと歩き出した。
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