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『さっさと話せ』という目つきを向けると、おっさんは話し出す。
『まず初めに…ここは天国じゃない ああ、君の家族ならちゃんと逝ったよ 君がいるこの場所は現世と儂等の住む世界の間…名づけると狭間の世界だ』
『狭間の…世界?』
家族がちゃんと旅立ったことに若干安堵しつつも、おっさんの言葉を繰り返す。
一体俺をこんなところに連れてどうするつもりなんだろうか。
『そう この世界は本来生者も死者も入ることは出来ない …が、そうでないものならば可能だ』
『…おっさんのような人か?』
俺の問いに若干の間を空けて、首を振る。
じゃあおっさん何で入れるんだよ。あと俺も。
『いや、今の問いは厳密には間違ってはいないんだ 君は儂のようなものではないからね』
『おっさんは…何者なんだ?』
ようやくこのおっさんが何者かを聞くチャンスが訪れた。
服装的には天使か何かか? 俺が普段見る小説だと神様だったりするけど…
『儂は…悪魔だ おっと、勘違いしないでくれ 別に悪さを働いたりはしない』
悪魔だと名乗った瞬間思わず一歩下がってしまう。
が、会ってから今まで彼は俺に危害は加えてないことに気付き、申し訳ない気持ちになる。
でもその服装は詐欺だろ。
いや、偏見かもしれないけど…なんで白の衣装?
まぁいいか。
『おっさんは…なんでこんなところにいるんだ?』
悪魔がどういったものかは知らないが、生者でも死者でもないのは間違いない。
だからといってどうして俺と二人でここにいるのだろうか。
『さっき言った通りだ 君が生きる意志を持っていたから願いを叶えるんだよ』
『…代償は俺の命ってか? 俺の命と引き換えに俺達を殺した犯人に復讐できるんだな?』
『ようやく話が掴めてきた』そう思った俺だったが、おっさんは申し訳なさそうに首を横に振る。
え?
『そういうこともできるけど…君は死んだだろ?』
『…そうだな だったらどうして俺はここにいるんだ?』
ここは生きている者も死んでいる者も入れない…ということは仮死状態なのか?
いや、爆弾が直撃したような惨状で生きているわけはない…なのにどうして俺はここに?
わからん…さっぱりわからん!
俺が考えている間黙っていたおっさんに続きを促す。
少し、ためらいながらおっさんは口を開く。
『晴君、君は…生き返りたいかい? それより…君の家族と一緒の場所へ逝きたいかい?』
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