第五章 ライバル店、グッドライフとの攻防

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その日の午後、店長と副店長は意気消沈してスパイから帰ってきた。 「安い、安すぎる。うちであの値段に対抗できる気がしない。」 珍しく弱気になっていた。 そんなおり、あるお客さんが鼻息荒く、うちの店をたずねてきた。 「あのグッドライフって店、サービス悪いよー。あそこで買った商品なのにさ、部品を取り寄せられないって言うんだよ。ナイスさんだったら取り寄せてくれるんじゃないですかねーなんて言うんだよ。だからこっちに来たよ。あんなサービスの悪い店、二度と行かないからな。」  そうだ、うちのモットーは、可能な限り、お取り寄せをいたします。 サービス第一、お客様の立場に立って考えるがモットーなのだ。 「もちろん、当店でお取り寄せいたします。当店では、アフターもお任せください。技術者が常駐しておりますので、修理もすぐに対応できますよ。」 私は普段しない、飛び切りの笑顔をお客さんに振りまいたのだ。 その後、グッドライフのグランドオープンセールが終わり、徐々にお客さんの足もこちらに戻ってきた。 「グッドライフ、安いのは最初だけだったなー。しかも、やたら人が多くてほとんど商品が見れなかったよ。それに比べてナイスは広くて、専門的な物も置いてるからいいね。わしら、年寄りってのはね、こだわりがあるから。店員さんのクオリティーも高いし、やっぱこっちのが落ち着くね。」  そんな声を聞けて、私は嬉しくなった。 徐々に客足も元に戻ってきて、つぶれるかもしれないという懸念は杞憂に終わった気がする。  ぼんやりそんなことを考えていると、店内入り口から、これ見よがしにグッドライフの制服と見られる服を着た男性が二名入店してきたのだ。 ほー、堂々と制服を着てくるとは、いい根性してるじゃんか。 スパイなんて姑息な真似しやがって。 あれ?待てよ? そう言えば、うちもスパイが二名、偵察に行ったのか。 お互い様ってとこか。 さぁ、グッドライフさん、今度はどう出てくる? 楽しみにしているよ。 かかってこいや。
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