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「特招会で売り上げ一位になった部門担当者には金一封が出ます。」
私はホワイトボードにデカデカと書かれた文字に見入っている。
「いくら出るんすかね。」
興味本位で、副店長に聞いてみた。
「さあ~。大した金額じゃあないんじゃないの?うちの店、セコいからねー。」
副店長の中野は鏡で鼻毛のチェックをして、生返事だ。
私は永遠の中二の心を持つ腐女子 水戸 奈津子。
この大型ホームセンターでパートとして働いている。
「フフン、売り上げ一位はうちの部門がいただいたね。この日のために、エクステリアのリフォーム代金を今日支払いに来るようにお客さんにアピールしといたから。ポイント10倍つくから、お得ですよーってね。」
補修部門の主任がしたり顔で言った。
「あー、きったねー。ずるいぞー。」
園芸部門の田中君が言った。
「なんとでも言え。売り上げとったもん勝ちだよ。結果だよ。結果を出してナンボでしょ。」
主任の梶原と田中が小競り合いをしている。
私には関係のないことだな。
どうせ私は、担当無しのクレーム処理班、サービスカウンターなのだから。
今回は「お客様特別招待会」と銘打って、お買い得商品を満載
しかもポイント10倍の大イベントを行う。
お、そろそろ朝礼の時間だ。
全員整列して、挨拶が始まる。
挨拶が終わると社訓の唱和だ。
12時間営業の店なので、朝礼と言っても、シフト別にお客さんの居る時間帯に、朝礼をするので、このお客に媚びた社訓の唱和はかなりあざといと私は思う。お客様に感謝するだの、なんだの、心にもないことを連呼するのだ。
「こら、水戸納豆、声が小さいぞ。」
店長の金田に言われた。
今度それ言ったら殺す!
心の中だけで呟いた。
2年前赴任してきた店長は鬼だ。
人使いが荒く、毒舌でしかも、人に不愉快なあだ名をつけるのが得意だ。
まぁ水戸納豆は昔からからかわれたことのあるあだ名だから、よけいむかつく。
腐女子だしね。どーせ腐ってるしね。性根だって腐ってるから。
だから私の頭の中には、嫌な常連客の死体が累々と転がってるから。
「なんとか売り上げ取れるよう、がんばりましょう!」
店長がシュプレヒコールをする。
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