第一章 ようこそ、ホームセンターへ。炎上上等。

2/3
前へ
/40ページ
次へ
「特招会で売り上げ一位になった部門担当者には金一封が出ます。」 私はホワイトボードにデカデカと書かれた文字に見入っている。 「いくら出るんすかね。」 興味本位で、副店長に聞いてみた。 「さあ~。大した金額じゃあないんじゃないの?うちの店、セコいからねー。」 副店長の中野は鏡で鼻毛のチェックをして、生返事だ。 私は永遠の中二の心を持つ腐女子 水戸 奈津子。 この大型ホームセンターでパートとして働いている。 「フフン、売り上げ一位はうちの部門がいただいたね。この日のために、エクステリアのリフォーム代金を今日支払いに来るようにお客さんにアピールしといたから。ポイント10倍つくから、お得ですよーってね。」 補修部門の主任がしたり顔で言った。 「あー、きったねー。ずるいぞー。」 園芸部門の田中君が言った。 「なんとでも言え。売り上げとったもん勝ちだよ。結果だよ。結果を出してナンボでしょ。」 主任の梶原と田中が小競り合いをしている。 私には関係のないことだな。 どうせ私は、担当無しのクレーム処理班、サービスカウンターなのだから。 今回は「お客様特別招待会」と銘打って、お買い得商品を満載 しかもポイント10倍の大イベントを行う。 お、そろそろ朝礼の時間だ。 全員整列して、挨拶が始まる。 挨拶が終わると社訓の唱和だ。 12時間営業の店なので、朝礼と言っても、シフト別にお客さんの居る時間帯に、朝礼をするので、このお客に媚びた社訓の唱和はかなりあざといと私は思う。お客様に感謝するだの、なんだの、心にもないことを連呼するのだ。 「こら、水戸納豆、声が小さいぞ。」 店長の金田に言われた。 今度それ言ったら殺す! 心の中だけで呟いた。 2年前赴任してきた店長は鬼だ。 人使いが荒く、毒舌でしかも、人に不愉快なあだ名をつけるのが得意だ。 まぁ水戸納豆は昔からからかわれたことのあるあだ名だから、よけいむかつく。 腐女子だしね。どーせ腐ってるしね。性根だって腐ってるから。 だから私の頭の中には、嫌な常連客の死体が累々と転がってるから。 「なんとか売り上げ取れるよう、がんばりましょう!」 店長がシュプレヒコールをする。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加