9人が本棚に入れています
本棚に追加
来月の第三週の木曜日から日曜日までの4日間
わがホームセンターナイスでは、創業祭が行われる。
そこでわが菅井店で、本部イベントとは別に特別イベントを開催し
売り上げを取って行こうというのだ。
社員、パート全員に創業祭イベントの案を募るべく、アンケートが行われた。
まあ、どうせ、案を出したところで無難なイベントでまとまるのがオチでしょ。
そう考えて私は、ちょっとふざけた提案を書いた。
「ナイス独自のゆるキャラを作り、その着ぐるみを着てお祭りを盛り上げる。」
こんなふざけた案が通るはずが無い。私は一人、腹の中で笑っていたのだ。
ところが、その案が通ってしまった。
「嘘でしょ?ゆるキャラなんて、間に合うはずがないじゃないですか。」
私は店長に食ってかかった。
「ところが、間に合うんだな。俺がいい着ぐるみを押さえておいた。これにうちのロゴを入れて、ちょっと改造すればいいんだよ。」
「だ、誰が着るんですか?それ。」
すると店長がニヤニヤ笑いながら私を指差した。
「え?なんで?私?」
「当然だろう、発案者が着るのは。」
「えっ?」
無記名なのになんでバレた?
「あんな汚い字でふざけた発想をするのは、お前くらいしかいないじゃん。そのふざけた挑戦状、受けてたつ。店長命令だ。頼むぞ、水戸納豆。」
うわー墓穴掘っちゃったよー。マジか!
改造は手芸好きのおばちゃんが引き受けたそうで、どんな物になるのかは、その日までのお楽しみだと、店長が悪魔のように笑った。
そして、ついにイベント当日、私は朝、休憩室でとんでもない物を目にする。
えーと、これ。
アッガイ?
マジか!やっていいのか!著作権は?
アッガイどこから持ってきた、店長。
しかも女装だよ、アッガイ。
ミニスカにリボンにマント、胸には「ナイス」のロゴが入っている。
ふざけんな!こんなダサいの着れるかよ!
「今日は帰らせていただきまーす。」
私は小さく呟きながら踵を返した。
すると目の前に店長が現れた。
「どこ行くの?水戸ちゃん。さあ、お着替えしようねえ。」
私は店長のわきをすり抜けてダッシュした。
「はいはい、だめよー。発案者は逃げちゃ。」
長身の主任が私の着ていたパーカーのフードを引っ張った。
最初のコメントを投稿しよう!