第二章 ゆるキャラ誕生

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来月の第三週の木曜日から日曜日までの4日間 わがホームセンターナイスでは、創業祭が行われる。 そこでわが菅井店で、本部イベントとは別に特別イベントを開催し 売り上げを取って行こうというのだ。 社員、パート全員に創業祭イベントの案を募るべく、アンケートが行われた。 まあ、どうせ、案を出したところで無難なイベントでまとまるのがオチでしょ。 そう考えて私は、ちょっとふざけた提案を書いた。 「ナイス独自のゆるキャラを作り、その着ぐるみを着てお祭りを盛り上げる。」 こんなふざけた案が通るはずが無い。私は一人、腹の中で笑っていたのだ。 ところが、その案が通ってしまった。 「嘘でしょ?ゆるキャラなんて、間に合うはずがないじゃないですか。」 私は店長に食ってかかった。 「ところが、間に合うんだな。俺がいい着ぐるみを押さえておいた。これにうちのロゴを入れて、ちょっと改造すればいいんだよ。」 「だ、誰が着るんですか?それ。」 すると店長がニヤニヤ笑いながら私を指差した。 「え?なんで?私?」 「当然だろう、発案者が着るのは。」 「えっ?」 無記名なのになんでバレた? 「あんな汚い字でふざけた発想をするのは、お前くらいしかいないじゃん。そのふざけた挑戦状、受けてたつ。店長命令だ。頼むぞ、水戸納豆。」  うわー墓穴掘っちゃったよー。マジか! 改造は手芸好きのおばちゃんが引き受けたそうで、どんな物になるのかは、その日までのお楽しみだと、店長が悪魔のように笑った。 そして、ついにイベント当日、私は朝、休憩室でとんでもない物を目にする。 えーと、これ。 アッガイ? マジか!やっていいのか!著作権は? アッガイどこから持ってきた、店長。 しかも女装だよ、アッガイ。 ミニスカにリボンにマント、胸には「ナイス」のロゴが入っている。 ふざけんな!こんなダサいの着れるかよ! 「今日は帰らせていただきまーす。」 私は小さく呟きながら踵を返した。 すると目の前に店長が現れた。 「どこ行くの?水戸ちゃん。さあ、お着替えしようねえ。」 私は店長のわきをすり抜けてダッシュした。 「はいはい、だめよー。発案者は逃げちゃ。」 長身の主任が私の着ていたパーカーのフードを引っ張った。
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