第三章 ザクとは違うのだよ、ザクとは

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私はアッガイもどきの視界の悪さのため、主任に手を引かれ 正面玄関で、お客様をお出迎えすることになった。 「いらっしゃいませ!」 一斉の挨拶と共に、私もペコリとアッガイもどきのまま礼をする。 お客さんの反応は微妙だった。  というのも、たぶんご年配の人ばかりだったので、 この不思議な着ぐるみが 何なのかを理解できないのだ。 これが何かわかる世代の人の反応も微妙だった。  苦笑い、失笑。だからやりたくなかったんだ。 オタクっぽい男性から「アッガイ?」と言われた。 私は嬉々として、飛び跳ねて見せた。 「何でアッガイ?ザクじゃないの?」 男性は半笑いで言う。 「ザクとは違うのだよ、ザクとは。」 私が言うと男性はゲラゲラ笑った。 「すみませんね、お客様~。バカ、余計なこと言うなよ。」 主任に頭をはたかれてしまった。 「げー、なにこれ!だっせえ!ちょーだっせえ、この着ぐるみー!」 小学生のクソガキが、私の足を蹴ってきた。 私は、ムカついたので、アッガイの中指と思われる指を立ててやった。 「やめろ、アホ!」 また主任にはたかれる。 「バーカバーカ、ざまあみろ。」 クソガキにはやし立てられ、私はアッガイもどきの中で歯軋りをした。 一時撤退し、またお昼からの丸太切りイベントに私は借り出された。 お客様に丸太切りで、タイムを競ってもらい、優勝者には賞品をお渡しするというイベントだ。 炎天下の中、そのイベントはテントの中で行われた。 私、アッガイもどき「ナイスちゃん」はお客様の応援要員だ。 私は十分クールダウンと、水分補給をしていたのだけど、暑さで私は参ってきた。 応援のダンスをしながらも、気ぐるみの中は滝のような汗が流れ ついに私は吐き気を催してきた。 ダメだ、こんな物の中で吐いたら。 ヤバイって。 でも、どうにももう我慢できない。 気がついたら私は、通気穴のアッガイの口の部分から嘔吐した。 会場は大惨事だった。 「ギャー、アッガイが吐いた!」
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