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「ハルツ、これを」
ハルツは大柄な体を縮めるようにして座り、前にフェイスがイーグから持って帰ってきたマルコムの論説書を一心に読んでいたが、フェイスに声を掛けられると不思議そうな顔で手紙を受け取った。
さっと読み、
「何ですか、これ?」
と、少し驚いた顔で言った。
「トルコーの友人からの手紙だ。
差出人の名は書いてないがね」
「お友達さんは、政府の人なんですか?」
「そうではないが、まぁ近い場所にいるな」
ハルツは少し戸惑ったような顔だ。
「艦隊五隻って、大変じゃないですか」
「そりゃ大変さ。
今頃政府は蜂の巣をつついたような騒ぎになってるだろうよ」
フェイスはそう言って、腰に手を当て斜め上を見ながらパイプを何度かふかした。
「まぁ、俺たちは俺たちの仕事をする。
今まで通りマルコムの研究を地道にするしかないさ。
知っておくのは価値があるが、どうこう騒ぐのは、少し違う気がする。
とは言え、うまく停戦にならなければ、困ったことになるがな」
うまく停戦にならなければ、それは本土上陸や虐殺という事態にもなりかねない。
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