第1章

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「ハルツ、これを」  ハルツは大柄な体を縮めるようにして座り、前にフェイスがイーグから持って帰ってきたマルコムの論説書を一心に読んでいたが、フェイスに声を掛けられると不思議そうな顔で手紙を受け取った。 さっと読み、 「何ですか、これ?」 と、少し驚いた顔で言った。 「トルコーの友人からの手紙だ。  差出人の名は書いてないがね」 「お友達さんは、政府の人なんですか?」 「そうではないが、まぁ近い場所にいるな」  ハルツは少し戸惑ったような顔だ。 「艦隊五隻って、大変じゃないですか」 「そりゃ大変さ。  今頃政府は蜂の巣をつついたような騒ぎになってるだろうよ」  フェイスはそう言って、腰に手を当て斜め上を見ながらパイプを何度かふかした。 「まぁ、俺たちは俺たちの仕事をする。  今まで通りマルコムの研究を地道にするしかないさ。  知っておくのは価値があるが、どうこう騒ぐのは、少し違う気がする。  とは言え、うまく停戦にならなければ、困ったことになるがな」  うまく停戦にならなければ、それは本土上陸や虐殺という事態にもなりかねない。
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