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「まぁともあれよく来てくれた。
こんな所で立ち話もなんだ、こっちへ入りなさい」
そう言ってフェイスは若者を、研究室の応接スペースへ案内した。
「君、名前は?」
その問いに、若者は短く、
「ファルガです」
と答えた。
少し内気で、拗ねた雰囲気だが、さすがに貴族の子弟だけあって、どことなしに育ちの良さが感じられた。
「どこかの子爵閣下よりよほど上品かもな」
と、内心思いながら、フェイスはハルツに茶を用意するよう頼んだ。
「学生に職を斡旋するのも大学の仕事の一つなんだ。
働き口の一つや二つ、紹介はできるよ。
ただし一所懸命働くことが、どんな仕事であっても大切だよ。
で、君はなんで今、職を失ったんだい?」
そう聞くと、ファルガは苦虫を噛み潰したような顔になって、うつむいた。
しばらく黙っていたがやがて、
「喧嘩したんだ。
上司と。
平民のくせに偉そうに命令ばかりするんだ」
フェイスは呆れた。
仕事に貴族も平民もない。
あるのはいかに結果を出すかであり、怠慢や傲慢は必ず淘汰される。
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