第1章

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「まぁともあれよく来てくれた。  こんな所で立ち話もなんだ、こっちへ入りなさい」  そう言ってフェイスは若者を、研究室の応接スペースへ案内した。 「君、名前は?」  その問いに、若者は短く、 「ファルガです」 と答えた。 少し内気で、拗ねた雰囲気だが、さすがに貴族の子弟だけあって、どことなしに育ちの良さが感じられた。 「どこかの子爵閣下よりよほど上品かもな」 と、内心思いながら、フェイスはハルツに茶を用意するよう頼んだ。 「学生に職を斡旋するのも大学の仕事の一つなんだ。  働き口の一つや二つ、紹介はできるよ。  ただし一所懸命働くことが、どんな仕事であっても大切だよ。  で、君はなんで今、職を失ったんだい?」  そう聞くと、ファルガは苦虫を噛み潰したような顔になって、うつむいた。 しばらく黙っていたがやがて、 「喧嘩したんだ。  上司と。  平民のくせに偉そうに命令ばかりするんだ」  フェイスは呆れた。 仕事に貴族も平民もない。 あるのはいかに結果を出すかであり、怠慢や傲慢は必ず淘汰される。
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