第1章

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 そう尋ねると、ファルガは少し悲しげな顔で、 「出ていません。  うちは裕福ではなかったので。  駄目ですか」 と答えた。 貴族のくせに大学も出ていないと笑われる。 そんな怯えが見て取れた。 「なに、大したことじゃない。  大学を出てる奴なんて、そんなにいないんだ。  知ってるだろうけど、中等教育令が出たのはほんの四年前だからね。  初等学校だけでも出られたら普通はありがたいのさ」  実際フェイスも、金銭面だけならとても大学など通えない。 現に妹は、初等学校しか出ていない。 フェイスは子供の頃から、品行方正とは縁遠いものの非常な秀才であったから、政府の奨学金で大学へ行けた。 貴族なら大学へ行けるというのは、一昔前、もっと帝国が強かった時代のことであり、そんな時代はもう随分前に終わっていた。 「大学を出ているというのなら、それだけで有り難がる会社もある。  だから念のため訊いたんだ。  だが現実的には、そんな一握りの人だけを雇って回せる会社もない。  まぁこうして来てくれたのも縁だ。  ちゃんと仕事を紹介するから、しばらく待っていてくれ」
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