第1章

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 住所と名前の書いたメモを渡し、履歴書の書き方も丁寧に教えた。  手書きなので時間が掛かるため、週末にしっかり書くよう伝え、その日は返した。  翌週明けた夜、研究室をそろそろ辞そうとしていた頃合いに、打電機が動いた。  例によってパイプをふかしながらそれを読めば、ファルガを採用する旨の連絡であった。  地方紙で記者見習いとは言え、新聞社は花形である。  昼夜のない大変な仕事だが、続けられるならば立派になるだろう。  フェイスはファルガに手紙を書いた。  おそらくギオーヌ社からも直接連絡は行っているだろうが、お祝いとねぎらいの言葉を伝えたかった。  手紙を帰りの道すがらで投函する。  近頃は筒型で赤塗りのポストがちらほらと普及してきて、フェイスが投函したのは大学前のそれだった。  恐らく週明けでしばらくすればファルガの手元に届くだろう。  季節は夏の始まり、雨が多く、この日も宵になって雨が降り始めていた。  あいにく傘を忘れてしまい、フェイスは駅までの石畳を小走りした。  馬車や人力が近くを通ると、飛沫が上がることもあった。  
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