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「あーあー、わかった。それと、年上のお姉さんに対してはもう少し丁寧な言葉使いで接してくれたまえ。シャキッと立って瞼をもう数パーセント開いてくれると尚よし」
「少し力抜いてるくらいがいいんだよ。目上の相手するなら話は別だがな。ま、女相手ならこれでも構わんだろ」
「……だから女子に疎まれるんじゃ? ああ、そもそも存在に気づかれないか」
「気づかれないならそれはそれでありがたい。目立たず穏便に過ごせるなら、顔が悪かろうがいいんだよ、別に」
「そのくせモテないことに僻んでるクセに」
「…………ッ」
それにしても、まだかよあの男は……。こんな俺じゃ長時間戦えんことはアイツも十分承知なはずなのに。
待っていても仕方ないか、やれやれと鈍い動きで回れ右をした、――その時だった。
「スマン神宮寺、遅れちまった。ふっ、後は俺に任せとけ」
覇気のない俺とは対照的な発声。その姿は中肉中背、だがもやしとよんでも差し支えがない程度には線が細い男。
「遅せぇよ。ギリギリアウトだ」
ポンと俺の肩を叩きつつ整髪料で整えた茶髪を靡かせ、女成分の混じった中性的な顔立ちを自信満々に前方の数学教師(ラスボス)へと向け、
「まあセンセイ、要求は一旦置いとくとしましょう。それよりも部費の交渉を」
――――篠宮天祷(しのみやあまと)。青春部、部員ナンバー1。そして部の創立者であり部長でもある男。
「ほうほう、成果が伴ってれば、私も職員会議と生徒会会議で熱意の籠った交渉をしてあげる」
ニヤリと笑った榊原教諭、篠宮部長は一枚の紙きれをドヤ顔で彼女に渡し、
「四月、五月で解決した人間関係の相談、依頼は全部で十三件です。入学したものの友達のできない一年には同級生を紹介してやって、恋人に酷いフラれ方をされたら仲裁をしてやって、不当に干された野球部員をレギュラーに復帰させてやって――……、解決した人間関係の数だけ生徒が救われた。ふふっ、どうですか?」
「そうか、お疲れさん。その成果なら部費の交渉にも使えそうだ」
「校内の活動のために自分を犠牲にする俺たちなら、他と比べてご褒美とよべるものも貰える権利くらいは――……」
「偉い活動だとは褒めてあげるけど、元は部費を集めるために渋々始めた活動じゃなかったか、人間関係の解決は?」
「……うっ、……んん……まっ、まあ……」
苦笑いで目を背ける篠宮だが、チラッと俺の方を向いて、
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