第1章

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私が初めて彼に出会ったのは、中庭のベンチに座っている時だった。雨上がりで、木の葉が陽射しにキラキラと輝いていた。 「椅子、びしょ濡れだよ?そんなところに座って大丈夫?」 そう言ってこちらを覗き込む彼の優しげな眼差しに、心臓が飛び跳ねた。きっと顔が紅くなっているんだろうなと思いながら返した言葉は、図らずもぶっきらぼうな言い方になってしまった。 「あたしが座っていたいんだからいいのっ。」 何でこんな可愛くない返事しかできないんだろう。少し気まずい空気が流れた様に思い、俯いていた顔を少し上げてみた。すると、意外にも彼は笑っていた。
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