第1章

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 熱弁していた男はスタッフに取り抑えられ、席へ戻される。まだ、何か喋っていた。 女司会『続きまして、下野孔明(したのこうめい)さんです』  黒服の男性が席を立った。明らかに異質な格好だ。他の専門家達は白衣やラフな恰好・・・いかにも研究者と言った感じ。しかし、男は特命の役職に就く人みたいだ。  男がステージ中央に移動し、マイクに近付く。 下野『僕が研究しているのは、“地球外生命体”です』  ブッ!・・・正矢は鼻を押さえた。 リタ「大丈夫?!正ちゃん」  まともな人はいないのか・・・正矢はティッシュを取りながら手を振る。 正矢「だ、大丈夫・・・鼻に来た」  正矢は鼻をかむ。観客の一部も笑っていた。 男司会『それは所謂、ユーマですよね?』 下野『ええ』  男司会は唖然とした。司会者も何の専門家かさえ聞かされていないようだ。人気の高い男司会が普段見せないような顔をするなか、女司会は話を続ける。 女司会『もしかして火星や月に生物が居たとかの?』 下野『いえ。僕は太陽系外の専門です』  会場が一瞬静かになると、次にはドッと笑い声が上がる。最初からそういった主旨の番組なのだろう。しかし、男は真剣そのものだ。
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