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「蓮児くんおはよー」
「おはよ、柊くん」
「蓮児ー、なんで走ってんの?」
「はい、みんなまとめておはよう」
なんで走ってるかだって?決まってる、英語の小テストがあるからだ。
憎たらしく俺の横を自転車で走り抜けていった女は、小学生からの付き合いの可奈。駅から学校までのわずかな距離も歩くのが嫌だからと、駅の駐輪場にマイバイクを置いている。金持ちの家は違う。
「可奈ちゃん!英語の小テストの勉強した!?俺、ヤバいの!さっきのさっきまで忘れてたの!」
「えー?してなーい。どうでもいいもーん」
しゃべり方からしてバカっぽいのだ、彼女は。あはははは、と高らかに笑い声をあげて駐輪場に向かう。少しでも期待した俺がバカだった。
「可奈は頼りにならん。ということは、」
「柊くん、諦めた方がいいよ。今週の小テスト作成したの、播磨先生だよ」
「ノー!アイキャントギブアップ!」
うちの学年は文系理系関係なく、毎週水曜日の朝に英語の小テストが実施される。テストは英語担当教師によってローテーションで作成されているのだが、播磨大先生というのが曲者である。
理系の英語担当教師はまだ優しい。播磨大先生はこの学校の英語主任であると同時に二年の文系クラスの責任者でもある。
そりゃ、厳しいのが当たり前かもしれないが。
「播磨の問題なんて解けるわけねー!」
親切に教えてくれた他クラスの女の子に、無意味な八つ当たりをする。もう走る気も失せたもんで、大人しく徒歩で教室に向かうことにした。
乙美のせいだ。とりあえず、そういうことにしておいた。
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