35人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
言うまでもなく小テストには撃沈したが、今日は理系科目が多いのでまだ救われた。
一限目の化学の移動準備をしていたら、憎たらしい女が寄って来た。
「蓮児ー、できた?」
「子供?まだよ」
「じゃなくて、小テスト!」
「聞く相手間違ってんじゃないの?可奈ちゃん」
そっか、そうだよね、とやはりバカっぽい笑い方をして隣の席に腰を下ろす。
「あなたも準備しなさいよー。化学、遅れちゃうわよ」
「化学キラーイ。数学スキー」
「あっそ」
時々、本当にこの女はどうやってこの高校に入学したんだろうと疑問に思うことがある。見た目も中身もバカっぽい。本人も言うように、理系のくせに化学が嫌いで、確か万年赤点だ。仮にもうちは進学校。合格スレスレだったということだろうか。
「可奈、お前何が得意なの?」
「お料理と片付け!」
「アホ。コンパじゃねえんだよ。何媚びてんだ」
「ふっふっふっ。あたしは数学が大得意ですー!」
嘘をつくな、嘘を。
「あ、その顔疑ってるでしょ。本当だよー……ほら!」
ポケットから何を取り出したかと思えば、前回の定期考査の得点表。なんでポケットに入れっ放しになってんだ。片付けが得意なんじゃないのか。
「現文三十六、古典三十八、化学十四…ひどいなこりゃ」
「数学!見てよ!」
「んー?物理…倫理…数Ⅱ…九十八!?」
ふふん、と鼻高々に立ち上がり俺を見下す。さらに得点表の右に視線を移すと、数Bが満点だった。
「可奈ちゃん、あなた天才…」
「でしょー?」
「理系の素質あるわよ!化学はひどいけど!」
「でしょー?一言余計だけど。あとそのオネエ言葉似合ってないけど」
小学生からの付き合いだが、コイツが何が得意かなんて、全く知らなかった。中学まではおそらく、数学以外もそれなりにできたのだろう。ただ高校に入ってからは、こいつの真面目な姿はほとんど見なかったから、俺が勝手に誤解していただけだ。
いや、誤解でもないか。数学以外は本当にヤバい。
最初のコメントを投稿しよう!