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門をくぐると、外面よりかは手入れの行き届いた石段と屋敷の縁側が見える。開け放されたガラス戸の奥で、年若い女が慎ましさの欠片もなく寝転がっていた。
年の頃は15、6辺りだろうか。柔らかな濃紺の長髪をあたり一面に游がせて真っ白な手足を投げ出してはいるが、眼はしっかりと見開いている。
ぶつぶつとなにやら呟いているあたり、何やら思案中のようである。
「あのぅ、もし」
野性動物を思わせる動きでつっと此方を振り向いた女は、みるみる驚愕の表情を浮かべ、叫んだ。
「まぁ。新規のお客様じゃないの!」
女は軽い身のこなしでさっと起き上がり、パタパタと奥へ引っ込んでいったかと思うと、年季の入った玄関の格子戸がガラリと開け放たれた。
「御免して頂戴ね。めったにお客など来ないものですから」
ふわふわと背中で遊んでいた髪は、スッキリと後ろに結わえられている。
闇を閉じ込めたような大きく澄んだ瞳。桜の花びらを思わせる小さな唇。遠目にはわからなかったが、たいそう一目を惹く容姿の女だった。
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