第1章

3/5
前へ
/10ページ
次へ
知らない内におれはあの人といることが なによりもの癒しに、息抜きになっていた。 「ほんと、笑える」 あんなにも嫌っていたはずなのに。 な。 一歩踏み出す。 靴を履いたまま。 踏み出した。 笑うだろうか。 こんなおれを見たあの人は。 「あんたが望んだ通りになりましたよ」 自嘲する。 あの人は、なぜいなくなったのだろうか? なーんて。 判るはずもない。 判るわけもない。 考えるだけ無駄だ。 阿呆らしい。 馬鹿馬鹿しい。 「じゃあ、さ」 誰もいない。 おれしかいない、浜辺で呟く。 あの人に問う。 「おれは何をしたらよかったんですか?」 おれは。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加