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「お疲れっした。ウルフィー」
ん、と軽く返事をして歩みを進める。
「情報の方は、取れたか」
「それがなかなか…やっぱり王様が居るってことっすから力が強すぎて妨害されまくってましたっすねぇ」
「まあ、そんなもんか」
「ただ、」
わざと間を置くように話し始める。これは、奴なりのよく聞いて欲しいことの合図だ。
「あまり先方の言うことに従わなくてもいいってことは分かりましたかね
あちらさん、大きい"爆弾"抱えてるらしいっすよ」
いつもは固く閉じられていた目が薄く開き、夕焼けの様な瞳がギラギラと光を放つ。
「……上出来だな」
にやり、と口元が弧を描く。
その次の瞬間、一等強い風が吹いた、と思った時には二人の姿はなかった。
空は陰り、カラス達が喧しく鳴き、飛び交っている。
その場は物々しく、重い雰囲気で包まれていた。
まるで、この後起こりうる悲劇を暗示するかのようで
――さあ、役者は揃った。開演のベルは既に鳴らされてしまったのだ。
序章 fin
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