プロローグ

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「いや、私はアリスって名前じゃなくてっ」 自分の名前を言おうとしたとき、後ろから手で口を塞がれた。 「ダメだよアリス。 ここじゃ名前を名乗れない店なんだ」 口を塞いでいるのは私をここまで引っ張って来た人とそっくりな顔をした人。 おんなじ人かと思えば服がちょっと違う。 手を引っ張って連れてきたのは燕尾服にスラックスだったけど、この人はベストにスラックスだ。 それに眼鏡を掛けていない。 「んむー」 くぐもった声が手の中に響く。 ようやく手を解放してくれたとき、 「何をしている。ウカレウサギ」 「あたっ」 緑に金の刺繍を施された軍服を着た男の人が口を押さえていた人の頭を叩いていた。
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