涙味のサバの味噌煮定食

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会社から少しだけ離れた定食屋。 安くて美味しいけど、少し距離があるから、同じ会社の人は見当たらない。 「……私、サバの味噌煮」 「じゃあ、俺は唐揚げ」 二人でそれぞれ定食を頼む。 奥のテーブル席に腰かけたが、ざわついた店内は、真面目な話をするのに、似つかわしくない。 テーブルの上に置かれたお冷のグラスは、もうすぐ冬だというのに、表面に水滴がついている。 ……急いで洗って、拭いて無いのかな? そう思いながら、そのグラスに手を伸ばすことすらできない。 倉本だけが、お冷を一口飲み、喉を潤す。 「………黒沢さんと上手くいったのか?」 話を切り出してくれたのは、倉本だった。
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