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弟達に母が死ぬかもしれないなどという酷なことを、一体どうして口に出来るだろうか。
下の弟はまだ五つになったばかりだというのに。
「大丈夫。不安がらなくていい。母上は良くなるよ」
不安そうな世蓋の頭を撫でて、公明に向かって微笑む。
「俺は父上の所へ行ってくる。お前達はそこに落としてしまったものを、片付けておいておくれ。後で雪に母上の精がつくようなものを作ってもらおう」
ぽんぽんと世蓋の肩を叩いて公明に預ける。そして自分は父と慶贇の元へと歩みを進めた。
二人の大人はこちらに気が付くと、話を中断した。聞かせるつもりは無い…そう言いたいのだろうか。
「慶贇殿、お早うございます」
完璧な作り笑顔を振りまきながら、慶贇へと近付く。慶贇はそんな霽月の様子に気が付く事もなく、尚友の顔だけが引き攣っていた。
尚友は知っている、こういう時の霽月は我が子ながら驚く程に現当主である弟に似ていてやり手なのだと…。
軽くあしらっただけでは退きそうにない。そう思って溜息を吐いた。
「父上?お疲れのご様子ですね。お休みになられては如何ですか?」
邪魔だ、どけ…そんな台詞(というか、息子の本音)が聞こえたような気がする…。しかし退くわけにもいかないだろう。まさか十四の息子にこんなことを背負わせるわけにもいくまい。
「だ、だだだ、大丈夫だよ」
修羅のように睨む顔が怖すぎる…と心で泣きながら尚友は何とかそこに留まった。
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