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「そうですか。ならそこにいても良いですが。慶贇殿、お話があります」
霽月は心の中で舌打ちして、慶贇へと向き直った。
「何でしょう。霽月様。」
慶贇は神経質そうな顔を少しだけ歪めた。
「単刀直入に言いますと、母の病状は芳しくありません。それは私にも分かります。が、私はまだ母を死なせたくはない…どのようにすれば宜しいでしょうか?」
とっとと教えろ…そんな気持ちを隠して丁寧に訊く。
慶贇のような頑固な手合いの者に、決して上から目線で挑んではいけない…。あくまで下からだ。
慶贇は、貴族にこれだけ下手に出られて調子に乗ったのか、勝手にペラペラ話し出した。
「今、それを旦那様にお話していたところで御座います…菓翠様のご容態は霽月様の言う通り宜しくない。中央ならば手に入る、大陸の珍しい薬でしか菓翠様の症状を緩和する事は出来ないでしょう。」
つまりは中央に行けと。
「その薬があれば助かるのか?」
「ええ。良くなるでしょう」
それを聞いた霽月の行動は早かった。
「父上、本家へ行って参ります。慶贇師、必要な薬とやらを教えてください。」
霽月は慶贇から薬の名を聴くと走って母屋を出て、厩へと向かった。
そして馬に素早く乗ると、屋敷を出た。
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