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「こちらです」
通されたのは広い部屋だった。何やら調度品が沢山置いてあるが、全て大陸のものだろう。
家の造りもこちらのものとは違って大陸風であるから、調度品も大陸のもので揃えるのは悪くない。少し派手すぎる気がするが。
「霽月か…久しいな」
部屋の中で待っていた人物…伯父であり、風の氏の長者である螳が、霽月を見て、笑みを深める。
身長はそんなに高くない…多分、五尺四寸くらい。霽月と同じきつい吊り目のせいで、性格まできつく見えてしまうが、案外優しい人だ。
彼には子供がいないので、昔から可愛がって貰っている。
「伯父上。今日は火急の用があって参りました」
言葉に焦りが出たのだろう。螳の笑みが崩れ、真剣な顔になる。
「如何した。話せ」
「母の容体が悪化しました。薬を貰いたく存じます」
「何、『翠茜(スイセン)の君』が?」
翠茜の君とは、菓翠の別称である。翠茜とは母が生まれ育った場所で、その美しさを有名な歌人に詠まれたれた母は、そう呼ばれている。
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