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残念ながら霽月は母の美しさを髪の毛以外、受け継ぎはしなかったが、妹の雪と弟の世蓋は母によく似ていて美しい容姿をしている。
「はい。最近は本当に弱っていて…中央にあるという薬でしか治せないと医師に言われたのです」
「分かった。直ぐに用意させよう」
「伯父上」
動き出そうとした伯父を霽月が止めた。何だ、と螳が霽月を見つめる。霽月は息を吐くと、意を決して言った。
「母だけでも本家の方へ…此処へ置いておく事は出来ないでしょうか」
母はもう劇的に良くなる事は無い。けれど本家に置いてもらえれば大陸からの珍しい薬も手に入るし大陸から渡ってきた腕の良い医術に見て貰えるかもしれない。
母が生き長らえる事が出来るかもしれない…。僅かな可能性だが、霽月はそれに賭けたかった。
「霽月…確かに翠茜の君は、先の水大梟(スイタイキョウ)の娘御。我が風氏にとっても大切な方であるのは間違えない…しかし、お前達は本家を追い出されている身。こうして兄上やお前が本家にやって来ることを良く思わない者も一族には多い。その上、翠茜の君を此処に置くことになれば、一族の者達の反発は免れない。私は立場上それは避けたい」
分かってくれるな?そう言われても、分かりたくは無かった。確かに伯父の立場も大変だろう。直系ではあるが元々は次男だ。一族も頭が固い者が多くて、纏めるのが大変だと聞く。しかし納得してしまえば、自分は母を見捨てることになる。
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