山紫水明

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この国では、珍しい瓦葺きの屋根を睨みつけ、長身の少年は盛大に舌打ちをした。 憎々しげなその表情は告げていた。 くっそ面倒くせぇ、と。 しかしこれも家の為、強いては母の為。頑張るという言葉は嫌いな言葉だが、今はそれしか相応しい言葉はない。少しだけ頑張ってみようではないか。 そう決心して、ここまで大きくする必要があったのか分からない程に大きい建物の入り口を探そうと思ったらしく、きょきょろと辺りを見回すが…広すぎて面倒臭くなったらしい。 周囲を警戒しながら、巡らされている柵を飛び越えた。柵といっても大した事はない。たったの四尺だ。少年はそれを軽々と飛び越えた。 飛び越えた先で上手く着地をすると、少年は辺りを見回した。 どうやら目的地とは反対方向に来てしまったらしい。仕方ない、歩くかと歩みを進め、また建物を見上げた。 何から何まで大陸風にしているらしい。雰囲気は伯父の家に似ているけれど、倍は広い。 少年は、覚えた地図と、今いる場所を照らし合わせる。 ああ、面倒臭い…。 迎えくらい寄越せばいいのに。自分が勝手に柵から入った事を棚に上げてそう思ったようだ。 チッと小さな舌打ちが響く。
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