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霽月は、大陸から雲夢に帰ってきた使者が、あの馬鹿にしくさった書簡を持ってくるたびに苦い思いをしている。
それは父や伯父も同じようで、伯父は王子や王に字を教えているし、父も時々貴族の子弟に字を教えに行っている。(尚友の場合、何故かタダ同然で教えているので、大した収入にはなっていない)
霽月はまだ勉強中の身であるけれど、いつか人に教える事が出来るようになれれば、と思い日々精進している。
さて、今日ものんびり過ごそうと屋敷へと入ると、張り巡らされた柵の内側に馬が停めてあった。さて、こんな早朝に誰であろう…。
不思議に思い、近付くと見知った馬であった。栗毛の大人しい馬だ。
「何だ…来たのは慶贇(ケイイン)医師であったか…」
慶贇はこの辺りで唯一の医者だ。身体の弱い母の主治医でもありよく診にくる。
鼻面を撫でてやれば嬉しそうに首を振る。そんな馬を暫く撫で、別れを告げて足早に母屋の方へと向かう。
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