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「その男性、花束を持って百貨店に来たそうですよ」
仕事終わり、居酒屋の個室で、私と、ほのかさんは、みうちゃんの話に耳を傾けていた。
「意中の美容部員さんの前まで来て、付き合って下さい!っていったそうです」
「それはすごいな・・・」
「穏便にお断りして、もう来ないように説得したみたいですけど、結局、警備員に連行されたそうです。怒って花束を振り回しながら。最後には、無残に散った花びらが、フロアに残されていったそうです・・・」
「何で最後ホラー口調なのよ」
ほのかさんが、みうちゃんに突っ込む。
「怖い話だったのでつい。そういうことあるんですね」
「そんな事はほんと稀よ。まあ、そこまでいかないけど、決まった曜日・時間に来て、こっちを見てるとか、週に1、2回のペースでお店に来る、って言う話は耳にすることはあるわね」
「はぁ~、そういうのがあると落ち込みますよね」
「そういうのは稀なケースだから。そこの百貨店、気の毒ね」
少し落ち込んでいるみうちゃんの頭をほのかさんがなでる。
「私はそんな経験ないですけどね」
「ないにこしたことはないわよ」
まあそりゃそうだなあ。
「・・・そういえば、のぞみ。お隣さんが引っ越してきた、って言ってたわよね?」
「え?あ~、そうなんですよ。大学生くらいの若い男の子で。引っ越しのご挨拶の手紙をもらいました」
私はバッグから手紙を取り出し、ほのかさんに手渡した。
「今どきの子には珍しいわね」
「そうですよね」
みうちゃんが手紙をのぞきこむ。
「へぇ~、キレイな字ですね。小学校の頃よく書きましたよ。返事は書いたのですか?」
「どうしようか迷ってる。書いたら面倒なことになるかなぁ~」
「やめときなさい。返事を書いて変に続いてしまったら、家で落ち着けないわよ」
そう言った後、ほのかさんは店員さんに飲み物の追加を注文する。
みうちゃんもついでに注文したので、私も同じのを、と付け加える。
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