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「……少し言い過ぎたかな…」
フードの少女が、暗く異臭に溢れた下水道を歩く。足元には僅かだが光がともされており、歩くには困らない。
チチチ…一匹のネズミが少女を見上げ、すぐに走り出して暗闇に消える。
…ボク達はネズミだ。あの、小さく、汚ならしいネズミだ。
地下を這いずり、汚物を頬張り、暗闇を疾駆する。
いつか光の当たる地上を歩けると信じて、愚直に生き続ける。
だが、ボク達は知っている。この暗い下水道をを何処まで行ったとしても、暗闇に光が射す事なんてないのだという事を。
「…だから、ボク達は集まるんだ。ボク達を照らしてくれる、温かい光に」
あの、小さな少年に。
『ハツカー!遅いよー!!』
向こうの暗闇から、祐希の声が聴こえてくる。その声は狭い下水道のあちこちに反射して、少女を包み込んだ。
……あぁ、温かいなあ…待ってくれている人がいる。コレが、コレが『家族』…いや、『群れ』なんだね。祐希。
「今行くよ、ボス」
密やかな笑みをたたえながら、ハツカと呼ばれたフードの少女は暗闇に早足で進んで姿を消した。
ソレを見ていたのは…僅か数匹のネズミ達だけだった。
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