第1章

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「人生は矢のごとく速い」 昔、どっかのお偉いさん(多分ハゲ)が言ったらしい。なるほど…私は、その言葉をしみじみと噛み締めていた。 卒業、かあ… なんか不思議な感じだな…入学した時は、三年なんて長い物と感じたもんだけど… 終わってみれば、あっという間だった。 教室に入ると、まだ誰も来ていなかったが、黒板には『卒業おめでとう!!』の文字と、先生、後輩達の送辞の言葉が並んでいた。 …駄目、まだ泣くには早い。 思わず緩む涙腺を気合いで引き締めて、ゆっくり教室を見渡す。 並べられた机を手でなぞりながら間を歩く。 この机は金井の。授業中、よくこっそり本を読んでいたなあ… これは真波、お弁当を私の机にひっくり返して、凄い勢いで謝ってきたよね… これは章太郎…私の机にゲロをぶちまけやがったクソ野郎だ。 ひとつ、またひとつと思い出があふれてくる。今まで特に意識なんてしていなかったのに… 我ながら、最後だからって現金なものだ。
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