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私は指輪をペンダントに作り直してもらうため、とある古びた宝石リフォーム店にきていた。
「あの~」
「どうぞ」
カウンターには、オシャレに興味がなさそうで、だらしなくスーツを着ている店員さんが座っていた。
髪は天然パーマのようでボサボサしており、黒縁の眼鏡をかけている。
「この指輪のダイヤモンドをペンダントに作り直して欲しいのですが」
その男性店員に指輪を渡すと、ダイヤをぼーっと見つめ、少しすると焦点がずれた感じになり、一分ほど無言の時が流れた。
そして、ペン立てにあった鉛筆を手にすると、小さなメモ帳に何やら描き始めた。
どうやらペンダントのデザインをしているようだ。
こちらの要望を聞きもせずに。
「これでどうでしょうか?」
見せられたデザインは繊細なタッチで、シャンパングラスのように細長く、一枚の花びらで構成されているカラーという花が描かれていた。
花びらの中には、ダイヤモンドがあしらわれており、上から少し覗くとダイヤモンドが見えるようにデザインされている。
「前の持ち主の方はカラーの花がお好きだったようで、それにあなたならばお似合いと思います」
私は言葉が出なかった。
亡くなったお母さんはカラーの花が好きで、母の日にあげたこともある。
なぜ、この店員さんがそのことを知っているのか。
「気に入って頂けたようで」
いつの間にか、私の頬には涙が伝っていた。
「よろしくお願い致します」
私は、母の形見である結婚指輪を手渡し、店員さんへ深く会釈し、その店をあとにした。
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