三日目

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「……さようなら」 絞り出した声は、カサつく喉を通って空間へ。 「……気をつけて」 いつも涼しい響きを持つその人の声も、微かな掠れが耳に残る。 感情に直結した足は、縫い止められたように重い。 それでも、強く心を叱咤して、力を込めて頭を下げる。 柔く笑んだその人の顔。 振りきるように背を向けて、すっかり道となった草の間へ一歩ずつ潜り込む。 暗さを落とす影の中は、余計に思考を染めていく。 「……」 早めた足に、戸惑ったのは一瞬。 いつもなら振り返るその場所。 それでも、今日は。 「っ」 振り返ったその先に、いつものようにただ揺れる木々だけを写したら、心臓が潰れるようにキツく締め上げられるだろう。 それか、もし。 もし、あの瞳で見送る彼を見つけてしまったら。 きっと喉の奥でヒリつく感情が、一気に溢れだしてしまう。 --さようなら 唇をキツく噛みしめて、視線は先を捉えたまま駆けるように進みゆく。 自分を守ることを優先した俺にも、記憶の中の彼は優しく微笑んでいた。
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