五日目

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芯が溶けていく両足を無理やり動かし、震える腕に力を込めて玄関を出て裏庭へ。 フラつく足取りを止めたのは、先程作った小さな山の前。 そこに、眠っているのは。 『さようなら』 「……っ」 視界が霞む。 何一つ理解などしていないのに、この雫は一体何処から込み上げてくるのだろう。 ただひとつだけ、はっきりとしているのは。 『僕が此処で呼んでいたのは、紛れも無く、キミだった。』 「っ……、あいたい……」 止めどなく溢れ落ちる感情が、湿った焦げ茶を黒くする。 会いたい、会いたい、会いたい。 こんなにもたった一つだけを強く強く祈るなんて、初めてで、きっと最後。 「あいたいよ、"ひぐらし"さん」 あなたがあの場で呼んで、呼んで。 だからこそ引き寄せられた出逢いだったというのなら。 「……こんどは、オレが、よび続けますから……っ!」 どんなカタチでもいい。あなたが見つけてくれるなら。 この生命尽きるまで、ずっと、あなたを呼び続けるから。 「また、夏を過ごしましょう。他の季節も、一緒に」 あなたは紛れも無く、オレの唯一でした。 遠くに聞こえる初秋の声。 生まれ故郷で眠る彼は、もう、鳴かない。
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