第 十章 悲しき道化師

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《主(しゅ)が星を去れば我は無用……。 人類は星の崩壊と共に遠からず滅ぶ、為らば我が好きにしても良いと主は仰られた………》 風に吹かれ海辺の砂塵が宙を舞い……老人の長髪が捲れその顔が露になる。 深い井戸の様な暗い哀しみを湛えた知性的な瞳。 5000年……友も知人も子も無く 孤独に浸り疲れた一人の老人が其処に居た。 「拐った子供達はどうした?50年に一度の訳は?帰還者 ペインの意味は? そして……奴の目的は? もう明かしても良かろう?」 《特に禁じられてはおらぬ……教えても良い………が………知りたくば我が住みかまで来い ホムンクルドールよ……》 老人の背後の空間が渦巻き彼は虚空の彼方に消えた。 「アマテラス!! 」 イェンシングの悲痛な叫びが砂浜に響く…… 「まさか……奴 自身に自我=人格があったとは……完全な傀儡 か 人型ロボットだと思っていた。イェンシング………奴は殺戮を始めるぞ……方法は判らんが人類を自らの手で自殺に付き合わせるつもりだ。」 「妾以外をな」 波打ち際に立つイェンシングの姿がが海水溶け消える。 ソープの反応は早かった。だがそれ以上にイェンシングは用意周到で合った。 ※超音速魚雷※ 弾頭を特殊な気泡で包むことにより水の抵抗をほぼ零にし水中で音速を超える速度を可能にした魚雷。 音速の壁を破る際の凄まじい衝撃派により海は割れ二人のいた島は爆裂音と共に跡形も無く吹き飛んだ。 魚雷発射地点は島から百キロ先……流石のソープも警戒外であった。 島は消え巨大な渦が後に残る。 「イェンシング艦深度10000メートル!!更に潜航!!水中に未知の電磁場発生! 追尾不可!!」 「ウラッツェン!!イェンシングはどうでもいい!! ソープ様は!?ソープ様は無事か!!!?」 サリオンの絶叫が海域に木霊する…… 「ソープは死んだ。一瞬にして蒸発してな……」 無機質な冷たい声がサリオンの後からした。 「宵の明星(あがりの君)様!!」 古代縄文風の髪型に気品のある陰陽装 中に浮いたまま 宵の明星と呼ばれた男は吐き捨てた。 「同じ陛下の別身(エイリアス)でありながらイェンシング如きに殺されるとは……情けない」 「勝手に殺すな あがり」
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