第 十章 悲しき道化師

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ソープは大渦の中心に薄い虹色の羽衣を纏い浮いていた。 「デカダンスタイルか。よく壮喚が間に合ったな」 「予め森の奥に用意していたのさ。イェンシングを信用するなんて愚行は冒さない」 「しかしこれで奴の目的が明確になったな。ソープの予想通りでつまらぬがな」 「宵の明星 イェンシングは間がなりもアンノウン……人類の導き手 古代の神の一人だ。 その傲慢と知識欲の権化神と言われるイェンシングまで凋落されているとなると………」 「100%信用出来る味方は一握の砂だな……」 ソープと宵の明星はこの先の世界の混迷を確信していた…… 只でさえグラビティ・ボルテックスにより地球は近い将来滅びる運命に有るというのに、一致団結すべき力を持つ地球側のキーマン達が信用出来ないのは まさに絶望的、皆が疑心暗鬼で争えば塔の老人に死に際に最高の娯楽を提供するようなものだ。 「どうするソープ?残された時間は長くないぞ? イーサンや幇嶮 その他のアンノウンや超越者クラス一人一人確認する暇はないぞ。」 「宵の明星……お前は幇嶮の所へ向かってくれ、あいつだけは確認しておきたい。」 「イーサンはいいのか?」 「確認する意味が無い…元来当てに出来る男ではないからな……本気のログナーですら倒せん唯一の存在であの性格、動く時は奴は勝手に動く。」 「確かに……ログナーが全力を出して殺れぬ存在を我らにどうする事も出来ぬな。 信じ難い男よ……イーサン・ハント…」 皮肉家で他人を讃える事など皆無に等しい 宵の明星 にして認めざるえぬ男、彼が味方になるかどうかで闘いの雛盛は多大に変わる。 「しかし既に老人が自ら動いて延命を餌に有力者達に接触している事実は予想外だった……後手に回った事は否めない。 いかに強靭な人格を有する超越者とはいえ 死 と 生 を天秤に架けられては揺るがざる得まい。」 「ソープ。今の所 表立って動くのはイェンシングであろう、奴は海の支配者にして情報戦においては超越者クラスでも一・二を争う存在……早めにけりを付けねば更なる混乱は必定………どうする?」
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