第11章 祈り

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世界各地で豪雨による被害が頻発していた…… 年間降水量がほぼ零の干ばつ地帯。 多雨で知られる各地の巨大ジャングル 北極圏 南極大陸 地球上の全ての地域に今 原因不明の雨が降り続いていた。 EARTHは現在の降水量が世界的に3ヶ月続けば 人類社会は機能不全を起こし、文明は半壊すると発表した。 この世界的な異常気象が深海に潜む 一隻の星船の機能に因ると知る者は極僅かであった………。 「メフィスト! 早くなんとかしろ! 今はまだなんとか持ちこたえられるレベルだが、後一週間もすれば仮に イェンシングを止めても人類社会及び 生態系に残る爪痕は多大なものとなる!!」 スクリーンの向こう側で怒鳴るソープに対しメフィストは恐ろしい程 普段と変わらぬ冷酷な佇まいで無表情であった。 「イェンシングの星船は人類未踏の超超深海にあり、更に奴が重力渦による防波堤を展開している。事実上破壊するのは不可能だよアマテラス」 「我が浮遊城のバスターランチャーなら破壊は可能だ、だが威力が有りすぎて同時に地球のマントル層まで破壊してしまう、空間転移が可能なアルカンフェルは今 調整の最終段階に入っていて動けぬし、他のアンノウンや超越者は様々な思惑から現段階では様子見して……と いうより塔の老人の介入を懸念して動かぬ」 「老人がイェンシングを弄落した事で 自らも地球滅亡から生き延びる可能性があると誰しもが 誘惑に駆られる状況が生まれた、超常の力を持ち 神々と言われた者達でも死にたくは無いからな……」 その瞬間、明々としたメフィストの執務室に暗い陰が落ちた…… 「死……死こそ至高の安らぎ……命の灯は無限の……」 その時、メフィストの笑みをソープは初めて見た………魔界医師の微笑を……そして 見なければ良かったと何故か思った。
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