第11章 祈り

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神よ……… 古来 人は己れの理解を越える現象や災厄に見舞われた際……幾度となくこの言葉を吐いてきた…。 神 その概念は人に依り様々であるが、その根底にあるのは……他の強大な存在に対する依存性である。 自ら解決不能な事象を現実逃避し ただ祈る。結果 心に安寧はもたらすが現実は不変。 しかし 祈る 神が実在するかの如く ひたすら祈る。 善悪など無いこの宇宙で…… 宗教は残念ながら無力だ。人々の意思 行動理念を鼓舞又は統一化する以外は、それも 理 なぞ無い盲信的な側面が殆どである。 宇宙は存在はすれど それを観る第三者がいてこそ初めて 宇宙は表に出る。 要は 宇宙に価値を与えるのは知的レベルの高い 宇宙を認識出来る生命体のみである。 中国 広東省 黄河流域。 氾濫する河川に家も家族も失った 一人の少女は痩せ細った体で膝まづき…手を合わせ必死に神=釈迦に祈る。 「どうか…私達に救いを……死からの逃避を……」 そして彼女は死んだ。 衰弱死 誰にも看取られず ただ死んだ。 安らかな死に顔で………。 「くだらん。人類史において宗教の存在が文明の科学の進歩をいくら阻害してきた事か……、無知蒙昧な論理的根拠の無い思想や信仰など知的生命体にとり弊害以外の何物でも無い!」 イェンシングは忌々しげに吐き捨てた。 「しかし そう云った精神構造こそが進化の過程に必要な段階なのかもしれんな」 「メフィスト………」 魔界医師は部屋の燈が届かぬ僅な暗闇にひっそりと佇んでいた。
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