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されなかった
「何 !? 星船の量子CPUが妾の意志に反応せぬ 」
メフィストの体がアンデス山脈の重力亀裂から帰還した時と同じ光に包まれ真空状態の中 散歩にでも出掛ける様に歩み始める。
「何をしたメフィスト !」
「何も……多重水量子コンピューターが私の意志に従っているだけだ」
エンプレスは人生で初めて 呆ける という表情を浮かべた。 震える指先を気にもせず 言葉も出ない。
メフィストはエンプレスに聴こえるか否かの小声で呟いた。
「希望の完成品か………」
呆然自失から聞き覚えのある言葉を聴き エンプレスは我を取り戻した。
「妾の意志のみ従う水量子CPUが………? いやそれより………メフィスト 今何と言った?」
「希望の完成品 = イェンシング・ディグニツァライド と言ったのだ」
「何故お前がその名を知っている ! ! ! 我が 真名を ! ? その呼び名は妾が生まれ落ちた時に ある男が付けた名だ、以来一度も他言した事は無い ! ! 」
メフィストを包む光が輝きを増し…姿が見えなくなる。
「その名は私がつけた名だからな」
光が収束するとメフィストの姿は無く一人の青い肌をした疲れきった顔の男が立っていた。
イェンシングが最初に出会った男が。
「イェンシング……やはり完成品には成れなかったか……」 男の姿でメフィストが呟く。
「どういう事じゃこれは? 何が起こっておる !!」 最早 半狂乱のエンプレス。
メフィストは元の姿に戻り静かに語りだした……
「遥か昔 私は偶然にこの星船を発見した、超深海を探索中にな。機能が生きているスターシップに遭遇するなど奇跡に近い事だった………」
質問を浴びせようとしたエンプレスを片手で制止しメフィストは続けた。
「私はいつも通り触診から入り星船の表面を診た。すると突然表面の金属が流体化し私を中に取り込んだのだ」
「得体の知れぬ存在をスキャンも無しに船内に迎え入れるなぞ有り得ぬ ! 虚言じゃ ! ! 」
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