第11章 祈り

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狼狽え混乱の極地にいるエンプレスを無視しメフィストはさらに語る。 「中は蒼海色に淡く耀き、液体金属ともまた異なる不可思議な流体性の物質で構成された広大な空間になっており、泡沫の様な透明の色とりどりの球形の物体が不規則に流れていた。 そしてその中心には深い深い重たい蒼き煌めきを湛えた円錐状の物体が在り ゆっくりと自転していた。 そう…それが星船を司る 多元水量子コンピューターとも呼ぶべき中枢部であったのだ」 女皇帝はへたりこみ 遂には気を失いそうになった。 「聞けエンプレス、哀しくも尊き存在よ。 星船のアクアリウムコンピューターは私に2つの契約を求めてきた。 1つ 成功した実験体がいた場合 地上に出しその生態を見守る。 2つ その実験体がこの惑星に致命的な害悪をもたらす行動に出た場合 それを制止又は消去する。 アクアリウムAIが私を信頼し契約に到った詳しい経緯は今更語らぬが……こうして壮大な実験と観察は始まり、そして今……終焉を迎える……」 「契約……? 観察……?」 メフィストの言葉を噛み締めるエンプレス。 「 妾はお前の実験体だと言うのか ! ! 全てお前とマザーコンピューターが仕組んだ実験だと ! !」 「………………………そうだ」 「虚言を弄するな悪魔め! 妾はアトランティスやムーを築き、人類の進歩を裏で操りし神の一人 アンノウンぞ ! ! 」 「では何故 お前は自らの星船の全てを自由にできない? アクアリウムAIのプロトコルを解けないのだ? 中枢部にも入れず、機能も極一部しか使え」 「黙れメフィスト! それは 我を創造せし主 達が与えた試練じゃ、最後の完成品たる妾により高位への成長を促す為の」 エンプレスは使用すれば星船を内部から破壊しかねない規模の異能を発動しようとした………が 体は硬直し動かず 異能も使用不能になっていた。
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