第11章 祈り

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メフィストの掌の上に奇妙な物体が浮いていた。 球形から円錐形 くるくると自転しながら様々に形状を換える蒼い物体が。 「この星船の水量子コンピューターのアルゴリズムキーだ。人類がつい最近になり理論だけは発見した量子コンピューターの更に数段進化したバイオ量子コンピューターの核だ。」 女皇帝はそれを見て全てを悟った。創造主達の価値観を。 「妾は最後に間違ったのだな…完成品ではなく 未完成の実験体に成り果てたのだな……」 「人類は関係ない…星船の主達の境界線は惑星。彼等はこの地球を…生命の誕生しえる稀有な星をこそ最重要視していたのだ。」 「理解した………だが ! その稀有な惑星も間も無く消える……バブ・イルの塔の種族には誰も勝てぬ。ログナー以外は全て死に絶える ! メフィスト ! お前もな ! ! 」 「かもしれんな……しかし聞こえぬかエンプレス」 「何がじゃ?」 「滅び逝く種族の祈りが」 「気でも触れたかメフィスト。祈りなど何の価値が在ろうか、己れの無力を嘆き 行動も起こさず ただ奇跡という他力救済を願う愚昧の極致の行いじゃ」 エンプレスはメフィストが微笑を浮かべるのを初めて見た。 「同感だ。数々の人類以外の生命を殺戮してきていざ自らの番になると祈り 懇願する、全くレベルの低い知的生命体とは愚かな存在だなエンプレス。」 「バブ・イルに屈した妾に対する痛烈な皮肉よのメフィスト、しかし 妾には微塵の後悔も無いぞ。 現実の死を前にして生き残る可能性があるのなら妾は再び同じ選択をする。 妾を創造せし主達に会いたい…… それが妾の生きる目的じゃからの」 「む…………!?」
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