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「俺も…、大好きなんです、セリさんが俺のこと『野上』って呼ぶ時の声」
そう言って、わたしの頬にそっと手の甲を伸ばして触れてくる。目が合った。
そのまま手のひらを返し力を込めて顔を引き寄せられる。朝なのになぁ。これから仕事しなくちゃだし。そう思いながらも、大人しくヤツの唇を受けた。目を閉じてされるがままになっている。彼の手がわたしのうなじを掻き回すように撫でる。
ため息が自分の喉からもれるのがわかる。触れられた場所が痺れるように感じる。何にも考えらんないじゃん。ああもう。
「…野上、仕事」
「そうなんですけど…」
わたしの身体を服の上から探り始めた野上に、自分を振り切るように注意したけど、なかなか止める気配がない。
「…いやマジでさ、こんな朝から…本当…、駄目だって」
「そのことなんですけど、セリさん」
一向に手を止めようとしない野上が訴えるように続けた。
「最近、その…、夜は疲れてて、セリさんすぐ寝ちゃうし。午後は店も開けなきゃいけないし、つむぎも帰ってくるし…。全然二人きりになる時間なんて」
そう言って、両腕でぎゅっとわたしを抱きしめた。
「この時間帯しかないじゃないですか」
…そういう攻撃で来たか~。
うーん。
すかさず続きを始めた野上の手に耐えながらわたしは熟考した。ヤツの言うことには一理ないでもない。
最近は通常業務とネット書店に店の営業も加わったので、やはりそれなりに忙しく、その上つむぎの世話をするのでもう一杯一杯。夜はつむぎを寝かしつける時に大体そのまま気絶してしまうというのが実情ではある。
そういう意味で、しばらく我慢させているなぁ~という思いはないでもないし、正直なところ、そのぅ、自分でも、あぁもう、こんなことされながら理性的にものなんか考えられるか。でも一度自分でも最近こういうことされてないなぁなんて意識しちゃうと、なんか身体が反応するっていうか。もうやだ。
「…野上」
思わず名前を呼びながら彼の背に手を廻して引き寄せ、ねだるように唇を求める。それが野上に火を点けたらしく、わたしをカウンターに押しつけるように抑えつけると、服の中に手を入れて肌を直に触り始める。上を外されて胸を手で包まれ、下の中に指を入れられると、…ああ、もう。
「…野上」
耐えきれず声が洩れる。
「いっつもおんなじとこばっか…、駄目、だって…んんっ、…」
「だって、セリさん、ここ好きじゃないですか」
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