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コイツがこんな事言うのが珍しいとゆーか、なんか嬉しいとゆーか。とりあえず竜太の場合、今アドバイスしただけで終わらす話じゃねえな。
ふーん、てかなんか俺真面目だな。
「明日が土曜日で次の日曜日が試合だぞ? どうしたいの?」
「明日ヒロ先生がぼくんちに教えに来て下さいっ!」
わ が ま ま ガ キ
あーッ、明日はS女子短大の女達とカラオケの予定決めてたやん! つーか、おめーが俺んちに来やがれドあほう。いや待て待て待て俺んちはボロアパート。狭すぎ稽古出来んやんか。
いや、どんだけ器が小さいアホかよ俺は。何よりも竜太がってトコに興味が湧いてメットを脱いだんだろが。
げ、見上げる瞳のキラッキラ感がハンパない。口をクパァーッて開けてワクワク顔とか。
希望に満ち溢れた顔を向けられ、頻りに頭を掻く。面倒くさいのはゴメンだ。けどなあ……。
指先に長い前髪を絡めながら、何が1番ベストなのかを考え巡らせた。
しゃーないな。カラオケは遅れて合流するか。
「わかった。でも試合直前に稽古ってのは今回だけだぞ。普段から練習しとけドあほって話だからな。明日竜太んちに着くのは夕方6時半過ぎになるかな。俺が来る前に自分で練習して体をあっためとけ」
「やったーっ! やったーっ! ありがとうヒロ先生っ!」
「ちょ、先生ってのやめれ。俺は別に先生じゃないし、子供ん時から道場に通ってるだけやし、暇な時にブラッと来てるだけやし」
「教えてくれる人はみんな先生だよヒロ先生!」
ちくしょう可愛い事ゆーじゃねえか小僧。
そんな無垢に輝く瞳で見上げんな、眩しすぎて目が潰れそうだ。純粋目線ビームってこんなにパンチある武器なのか。もしかして密かに俺を攻撃してんのか? おい挑戦してんのかお前。アンパンのヒーローみたいなほっぺたをタプタプ揺らしてして可愛がっちゃうぞゴルァ。
だから先生じゃねーよと苦笑塗れで片手を上げ、空手道場を後にした。
誰が見ても運動が得意じゃないってのがわかる少年・竜太。
平均身長135cmの小学四年生の中でまだ120cmにも届いていないチビ、メガネ、運動テストD判定、ローレル指数はB判定の太り気味。
もう2年以上習っているのに未だに右足左足の運びがよくわかっていないし、自由組み手の練習中はトロさ故に動ける奴のサンドバッグになっていた。
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