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明日どうこう練習してもどうにかなるレベルじゃないってのはわかってるんだけど……。
わかってるんだけど!
竜太はいっつもニコニコしてんだ。
組み手の練習なんて皆真剣で睨み付けてんのに、ニコニコすんなっていっつも先生にしかられている。
試合で負けが決まった瞬間でもコートの中でニコニコしてるから先生から『少しは悔しがれ』と叱られていた。
練習中だけじゃない。学校でもどこでもずっとニッコニコ。ぽっちゃりでカワイイ顔のメガネだから女の先生や保護者ウケがいいらしい。『天然マダムキラー』の異名を持つ男・竜太。奴の顔は癒やし効果が絶大だった。
でもいつも笑顔ってのはチビの竜太には良いことだらけではなかった。なにをされてもニコニコってのは同学年の男子から見たら隙だらけ野郎って印象がついてしまったらしい。
『いつでもニコニコ故のプチいじめ』。
日常的にクラスメートの体格良い奴に蹴られて倒されて。プラスチックの小さな水筒を割られる意地悪をされても泣かず怒らず、やっぱり笑顔。
小学2年生の時に空手を習いに来たきっかけを知ったのはごく最近の話。稽古の合間の休憩時間に突然竜太の母親が駆け寄ってきて、下手でスミマセンいつも根気よく指導してくれてありがとう、と突然の礼と共に空手を習いにきたきっかけを聞かされた。
それでもなあ……。
日曜日にあるのは地元の小さな大会じゃない。他県からゴロゴロ集まるし一般の部まである大きな大会だ。
竜太は去年初めてその大会に出たんだけど『始め!』と言われて秒殺で1本取られていた。『上段追い突き』で。
ちょっとは知識が有る人は『え? なんで上段追い突きで1本取られたの?』ってなるだろう。大技なんかじゃないよね。普通は有効とか技ありだ。
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